遺書
わたしはいま50万円の貯金があります。
わたしが死んだら全て彼に渡してください。会う度に、美味しいものを食べにと連れてってくれて、優しくしてくれた恩があるので。
あと、部屋の本は売ってください。
できればわたしの部屋ごと燃やしてください。
会社の机の、右側の引き出しに判子があるので、妹にあげるなりしてください。高かったらしいので。
彼が寂しがらないようにしたいので、最後のお葬式までちゃんとくるように言ってください。
それできっちりお別れして、彼には他の人を好きになってほしいです。とてもいい人なので1人で生きるのはもったいない、遺伝子を絶えさすのは人類の損失なので…ああーでもわたしはやっぱり彼が1番好きなので、すごく好きなので、彼がたのしく生きるのが1番だと思っちゃうから、わたしのことは忘れて、わたしの、50万円で好きな人と北海道に行って朝からいくら丼を食べたりしてくれーー
美しくなりたいというゆるやかな自殺
美しくなりたい。
仕事を辞めて、結婚して、彼の望む慎ましい奥さんになる。
それが1番の「やりたいこと」ではあるけれど、「美しいこと」は大前提だと思う。
彼の同僚、上司に会ったときに、「きれいな奥さんだね」「⚫︎さんの奥さん、すごい美人だった」と言われるぐらい、美しくないと彼に申し訳ない。
仕事から疲れて帰ってきたときに、料理を出す手が、顔が、輪郭が、「かわいい」と思われないと
地元に帰省した時、地元の嫌いな人たちに「綺麗だな」と思われないと
そんな、自分のためのものすごい承認欲求が肥大して、綺麗になりたいと思う。
美しいことは特別なことじゃないけど、美しくないと可哀想。
特別じゃないから努力しても褒められないけど、でも最低ラインに立つために努力しないと
辞めたい。仕事もこんな考え方も
ふくれあがった自己愛も気持ち悪い
人とまともに話せずに、いつも自分の見た目ばかり気にしてる
歯並び、ほおの肉、目の下のしわ、目の形、眉毛、前髪の湿り気、唇の皮、気持ち悪い